今まで使用していたスタジオ機材の搬出が済んだので、無事に旧オフィスのリース契約を終了することができました。
時は4月の上旬。
もう旧スタジオに戻ることは無いのだなぁと思うと、今までの日々が本当に想い出の中だけに存在するものになったんだなぁと少し寂しい気がします。
それまでの日常、現在が過去のものになったんだなぁと思うと同時に、なにがなんでも前に進まなければ後が無いんだと、良い意味で前だけを見て進むしか無いチョイスの無い状況になりました。
言うなれば、馬車馬の視界を遮る覆いのような感じでしょうか。
音楽をしたければスタジオを完成するしか道は無し!
いろいろと選択肢があると迷うこともできますが、選択肢が無いのならかえって話がシンプルで良いかもしれませんね。
さて、スタジオの建設にあたって自分達がこれから具体的に何をしていくのかをみんなで知っておく必要があります。
壁の組み立てかたや消音の効果的な方法などをシュンさんが色々とオンラインで調べてYoutubeで見せてくれたりして、だんだんと自分達もスタジオがどのように作られているのか、そしてどんな資材を使っているのか見えてきました。
みんなで同じイメージが共有できていれば、作業も早いですよね。
イメージ学習ができたら今度は体を動かして実践タイムです!
「さて、どこが安いのかなぁ~?」
まずは新しいオフィススペースをみんなで確認して、間取りや必要な木材の数、ドライウォールの数など必要な資材のリストアップです。
もちろん最初から必要な資材がきっちり分かるものでもないので、柱や梁に使う角材、ネジなどを買って、骨組みが終わってから次の行程に進むことにしました。
壁に使うドライウォール(石膏ボード)は重いし割れやすいので、そちらは後でまとめて発注して業者に運んでもらうというプランにしました。
アメリカは土地が広いだけあって、本物の大工さんから日曜大工、趣味のレベルの人までが資材や機材を買いに行くHomeDepotやLowe’sなどの大型店舗が充実していて重宝します。
日本でもドイト(で良かったでしたっけ?)とか、なんとかホームセンターとかありますよね。
あれの10倍ぐらいの規模だと思ってもらえると丁度良いんじゃないかなぁと思います。
木屑やコンクリートの粉末で汚れた床、ごっつくて危険な道具、ずら~っと陳列されたペンキのバケツや園芸道具などが倉庫のように立ち並ぶだだっ広くて殺風景なスペース。
飾りっけなんて無くって本当に無造作。
日本のDIYショップとは趣が全然違って、荒々しくてタフな印象です。
無骨でスパルタンなアメリカを感じさせます。
マッチョでワイルドな現場の人達御用達な世界なのですが、週末にはDIYな人達がカップルで来たりファミリーで来ていたりと、そのミスマッチもなかなか面白いです。
こっちの人達に取っては、それも当たり前なアットホームな光景なんでしょうね。
(料理と日曜大工ができるのはモテル男、できるパパの条件に入っていることでしょう。)
メンバーみんなでオンラインで色んなお店の価格を調べて、あれはこっち、これはそっちでと資材ごとに買い出しにいくお店を振り分けます。
さすがオトナバンド、経済観念がしっかりしています。
まずは壁面全体に2x4インチの角材でできるだけ等間隔に柱を立て、電気の配線やエアコンのダクトを設置して、壁面の角材の隙間に消音のための緩衝剤を入れて、ドライウォールを張り、隙間をパテなどで埋めてからペンキを塗るという行程のようです。
こちらの建築はかなりシステム化されているようで、角材の幅や長さが先に決まっていて、それに従って窓やドアのサイズや取り付ける照明などのパーツの奥行きや深さなどが規格化されているそうです。
巻き尺のマークもそれにしたがって分かりやすいように色がついていたり、計測道具や定規などもその規格に沿って使いやすいようにサイズが用意されています。
なんともアメリカの合理的な一面がこんなところにも。
(自分が知らないだけで、日本もそうなのかもしれませんね。)
日本とは発想の出所が既に違っているような気がして興味深いです。
例えば、角材は2x4インチ、2x6、4x4などの太さのサイズが決まっていて、長さも8フィートや10フィートなど分かりやすく整理されていて、それにあわせて取り付け用の金具のサイズが数種類、板のサイズも数パターン。
壁面は2x4の角材を等間隔で並べて作るので、その隙間にいれる緩衝剤もサイズが決まっていて、組み上がった骨組みにぱんぱんとそのままはめていって、ドライウォールもそのままあててネジ止めして「はい終わり♪」って感じです。
窓もその2x4の角材の間隔の幅で数種類のパターンで用意されていて、「ここは4本分の広さだから何インチの窓を買えば良いね。」なんて感じですぐにサイズが割り出せるんです。
新築の家なんて、この規格をもとに設計されるので、壁の長さや部屋の高さなどが2x4の角材のサイズを元にして設計されています。
日本の建て売り住宅のコマーシャルで「ツーバイフォー工法」なんて言葉を耳にして「何じゃそりゃ?」なんて思ったことがありましたが、この角材が元になるアメリカ式の建築方式だったんですね。
(2x4はツー・バイ・フォーですもんね。)
子供の頃に疑問に思ったことが数十年後にアメリカで身をもって解き明かされるとは、なんとも面白いものですね。
そんな訳で、自分達もまずは2x4の角材、それにあう板、支柱用の4x4の角材を中心に資材を買いそろえました。
アメリカはクーポン天国。
スーパーマーケットなどではクーポンを上手に使うことでかなり節約をすることができます。
アメリカ人はかけるところにはお金をかけますが、絞るところは徹底的に絞ります。
この辺りの経済的なメリハリもアメリカ人の特徴かもしれません。
...というか、そうしないと色々なところでお金を持っていかれてしまうという、資本主義の悪癖の中で日々を暮らしていますからね。
自分の経済状況を守り、生活を維持するためにも、出ていくお金を守っていかないと自分達の暮らしが企業や政府の搾取から自分達を守れないという現実があります。
アメリカは自分のことは自分で守らないと誰も助けてくれない、そんなドライな国だなってよく思います。
ぼ~っとしていたら言いがかりをつけられて訴えられて、訴訟で大きなお金を巻き取られる国ですし、治安が悪いエリアもいっぱいありますから常に警戒心をもって生きていかないとすぐに餌食になってしまいます。
アメリカ人がなんでお金にあんなに神経を尖らせるのか、こっちで暮らしてみてなるほどなぁ~と思うようになりました。
「そりゃぁ~クーポン上手になる訳だぁ~。」
そんな訳で、自分達も割引クーポンを大活用して角材を大量に買い込んできました。
オフィスエリアに大量に積み込まれた角材の山。
新しいオフィスは商品保管の倉庫に使われていたスペースがあり、むき出しの角材で棚が作られていました。
そちらも既に解体して、スタジオ建築用の資材に生まれ変わっています。
さぁ、遂に夢のレコーディングスタジオに向けて着工です!
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