今回のアニメイベント「HANADOKI」、演奏会場はホテルの屋外ステージと聞いていました。
屋外だから音は散るだろうなぁ~、モニターは大丈夫かなぁ~などと思うこともありましたが、前回のイベントと主催団体が同じで、前回のモニター環境が良かったこともあってその辺りは心配していませんでした。
そう、それが油断だったと僕達が思い知るまでは…。
ドドドドォォ〜ン!!!
(あ、編集さん、ここでタイトルバックとテーマソングをお願いします。
え?違うんですか?
あぁ、そうですか、これ日記なんですか…。)
あ、すいません、ちょっと裏方の打ち合わせがうまくいっていなかったようで。
さて、そんなこんなで現地に着いた僕達は、早めに着いたこともあり、ホテルに向かうコスプレイヤーや撮影をしているコスプレイヤーを車内から眺め、アニメイベント会場の雰囲気を楽しんでいました。
コスプレイヤー達の情熱やクリエイティビティは見習うものがありますね。
好きなもの、好きな事を全身で表現するその姿勢、本当に素晴らしいことだと思いますし、アニメの力や可能性に圧倒されます。
何よりも、みんな楽しそうでピースフルなのがイイですよね。
世界中がこうなら戦争なんて起こらないだろうに…と思うのは単純すぎる発想かもしれませんが、文化や娯楽の世界が言葉や習慣の違いを乗り越えて世界を繋げることに一役買っているのは事実ですよね。
多少なりとも音楽をかじっている者として、作品や演奏を通じて調和やピースフルなマインドが世の中に増えていくようなことをできたらイイなぁと思います。
そんなことを考えてる間にバンはステージ側の機材搬入ポイントに向かいます。
ホテルと聞いていたので高層な建物を想像していましたが、2階建ての建物が敷地内に広がるリゾートホテル風(?)な風通しの良い会場でした。
その一角にちょこんと佇む仮設ステージ…。
気分はまさに、おらが町のイベントの仮設ステージです。
「これかい…。」
Canaeちゃんが言ってましたが、アニメイベントというのは現場入りしてみないとその日のステージって分からないものですね。
ホテルの敷地の中央にプールがあるので中央にはブースもステージも組めないようで、バンドの演奏は人通りの少ないところで行う羽目になっていました。
お金をかけたイベントは違うのかもしれませんが、規模の大きくないアニメイベントってバンド演奏は刺身のつまのようなものみたいですね。
でも、こういう簡素なステージはいかにも屋外コンサートという感じで、風通し良くて爽やかな感じがしていいですよね。
これで夕暮れ時にボッサなんかやったら最高だろうなぁ〜。
僕らが到着した頃にちょうどバンドが演奏していまして、アニメ好きのアメリカ人が英語の曲だけでなく日本語でアニソンを歌ったりボーカロイドの歌を歌ったり、アニメファンのコスプレイヤー達が聞き入っていたりと、アニメイベントならではのとても微笑ましい光景でした。
出発した時は曇り空でしたが、空はすっかり晴れ上がり、カリフォルニアの風がそよぐ心地よい週末のお昼時。
PAから聞こえる音はとてもクリアで、演奏者を見ている感じでは演奏しやすそうです。
Alとも合流して色々と手続きを済ませたら、演奏……までかなり時間の空きがあったので
ここでまたバンの出番です!
天井を跳ね上げ、ドアを開け放してちょっとした休憩所に。
いやぁ〜、南カリフォルニアの風を感じながらヤシの木の下でバンのツアー満喫です。
1時間ちょっとは談笑していたと思います。
「そろそろ時間じゃない?」
誰かが言い出すまで、すっかりくつろいで自分達が演奏に来たことなどすっかり忘れていました。
ステージに機材を運び込んでセッティング。
今回は小さいステージなのでドラムにマイクを立てない簡易なものでした。
自分のベースアンプはアウトプット端子があるので直接ミキサーにつなぐことができたので良かったのですが、Alのウクレレに使うギターアンプでは出力が足りなくて客席側からは聞こえないというハプニングが発生!
小さいステージとはいえ、そこは屋外ステージ。
音が拡散していってしまうので、離れた席まで十分なクオリティの音を届けようとするとそれなりのパワーが必要になります。
ベースアンプはミキサーにつなげるタイプのものも多いですが、ギターアンプは普通はそういうものはありません。
「じゃあ、アンプにマイクを立てればいいよね?」
PA「マイク?無いよ。」
「へ!?」
こ、これは一体どういうことでしょう。
前回のイベントと同じチームとは思えません。
前回は僕が使ったギターアンプにマイクを立てていましたから、その発想が無いとは思えないのですが…。
演奏者が皆それなりの出力のアンプを持ってくると思っていたのでしょうか?
じゃぁ、ハーモニー担当する人のマイクを使えばいいじゃないかと思ったら、ヴォーカル用のマイクはセンターの1本のみしか見当たりません。
え? まさかハーモニーをとるバンドが一つも出演していなかったのでしょうか?
それとも、マイクはみんな自前で持ってくるからPA側が用意する必要はないと考えていたとか?
「I have my mic!」
ここで、さすがのAlです。
ウクレレに引き続き、ここでも自前のマイクでピンチを切り抜けてくれました!
ギターアンプにマイクを立てて、これでウクレレの音量の問題はクリアになりました。
ベースの音量も設定を出しましたし、次はキーボードです。
「あの〜、聞こえないんですけど〜。」とカナエちゃん。
ステージを見回してみると、心なしか妙に風通しが良くスッキリした印象を受けるのは南カリフォルニアの風のせいだけではないようです
…あれ?
あるべきものが見当たりません。
…そう、なんと、事もあろうか、野外ステージなのに演奏者へ音を返すモニタースピーカーが無いというとんでもない状況に遭遇してしまったのです!!
PA「あぁ〜、モニター無いんだよねぇ〜。」
おぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜っっっっっっっ!!!!!!!
おもむろに客席に向けたスピーカーの向きを少しだけ内側に向けて「これで聞こえる?」とPAスタッフ。
む、無理でしょ…それ…。
前回は非の打ち所の無いモニタリング環境でした。
同じスタッフのはずなのに、今回はなぜこうも違うのか…。
あぁ、アメリカって広大だなぁ…。
ふと眼前にアリゾナの荒野が広がってゆくのが見えたようでした。
日本人は狭い家で肩寄せ合って暮らすから繊細すぎるほど繊細かもしれないけど、アメリカ人よ、これは大雑把すぎやしませんか!?
スタッフが数人集まって「困ったなぁ、どうしようかなぁ〜。」と真顔で途方に暮れています。
そ、それはコントなのか!?
他のバンドは何も問題なかったのか?
イベントは今日だけじゃなかったでしょ?
そ、その本当に想定外だったみたいな雰囲気は一体…!?
しかぁ〜し!!
ここでまたもやお助けマンのAlのファインプレーが!!!!
「I have my PA system!」
Alが車に向かいスピーカーを持ってきてくれました。
「これをモニターに使えば大丈夫!」
Al、凄すぎます!
バンドのピンチを何度救ってくれたことでしょう。
えぇ、Alがいなかったら今回の演奏は目も当てられないものになったのは間違いありません。
Alが自分のバンドで前日に演奏していたこともあるでしょうけど、自前の機材を揃えておくというのはパフォーマーにとって欠かせないことですね。
モニターがやってきたところで、さぁキーボードを繋ぎましょう!
…と思ったら…
PA「ケーブル無いんだよねぇ〜。」
おいぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜!!!!!!
マジかっ、マジなのかっ!?
それはギャグじゃないのか!?
どこまでこのコントは続くのか!?
とりあえず僕が持っていた予備のケーブルを使ってなんとかなりましたけど、予備の機材を持っておくって本当に大切ですねぇ。
ドタバタしましたが、これでキーボードの音がステージに返ってきました。
ふぅ、一安心です。
「あの〜、ヴォーカルが返ってこないんですけど」と、Canaeちゃん。
PA「ケーブルもう1本ある?」
んなもん、無いわぁぁぁぁ〜〜〜〜〜っっっ!!!!!!!
お、面白すぎるよ、PAさん。
ここまでくると、ある意味期待を裏切らない展開に芸人魂を見るような想いです。
なんとかPA側で出力をまとめてくれてモニタースピーカーにキーボードとヴォーカルが返ってくるようになりました。
これでステージの上でも自分達の音がすっきりと聞こえて、演奏環境に関して心配することは無くなりました。
あんなにコテコテのドタバタ劇を繰り広げたというのに、このモニタリング環境の快適さ…なんとも極端というか、なんというか、いやはや面白いものを見させていただきました。
そんなこんなでドタバタしているうちに演奏時間がやってきました。
あんなに余裕があった時間があっという間に消費されてしまっていたようです。
おかしいなぁ、セッティングが済んでからしばらくブースとかを見に行ける時間があったはずなのに…。
まぁ、仕方ありませんね。
物事が予定通りにいかないことなんてしょっちゅうですからね。
そんなこんなで僕たちのステージが幕を開けました!
「Hello~ everybody~!!!! I am CANAE~~~~!!!!!!」
Canaeちゃんの声がSanDiegoの青い空のもとに響き渡ります。
そう、響きすぎるほどに…。
って、客席ガラ空きじゃんよ〜〜〜〜〜!!!!!!
これは、リハか? リハなのかっっっっっっっ!!!????
昼下がりのそよ風がとてつもなく寒く感じたのは気のせいではないようです…。
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